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1.エステに行こう
思い出してみると子供のころからおなかは出ていたような気がする。小学校のプールの授業ではみんなの話題になったし、大学生のキャンプでは、みんなで最近腹が出てきたという話題になった時に、僕が黙って聞いているといきなり先輩に横腹を触られて、“一番気にしなあかんやつが黙ってる”と言われたことがある。
社会人になってからも体重を聞かれるたびに、僕が素直に答えるとびっくりされたものである。そのたび、“僕、脱ぐとすごいんですよ”なんてどっかのコマーシャルのせりふでとぼけていたものだ。まして、僕のおなかを見たことのある数少ない女性に至っては…となげいていたものである。
時は流れて1999年9月、僕は35歳になっていた。就職して12年たち、管理職になって毎日あわただしい日々をすごしている。その日も朝から3つの打合せを何とかこなし、ふと席に戻って周りを見渡して考えた。目の前には年齢50歳推定体重120kgの大デブ。斜め後ろには36歳推定95kgの中デブ。隣には年齢26歳最近成長中の推定70kgそして就職後+10kgのデブ。何と言うことだろう。そのとき83kgの僕は将来が初めて恐ろしくなった。今83kgあるのはたいした問題じゃない。しかし、この先確実に成長していって10年後98kgなんてなった日にゃどうすんねん。僕の中で危機感が芽生えた。もっともこんなことを思ったのは初めてじゃない。30歳のときにはそのころ気に入っていた女の子がマラソン好きということで刺激を受けて皇居を一緒に走ったものであった。(約5回)その次には家の前にあるスポーツジムの入会金無料キャンペーンをうけて入会し、いまや堂々のサウナ会員である。次は何にしよう???
★
そんなときに、私の愛読書である週刊モーニングにエステの痩身お試しキャンペーンの広告が載っていた。正直言って興味はあった。しかし、“男のくせにエステに行くなんて…”である。エステというのは、美しくなりたい女の子が行くところとばかり思っていた。まして僕は美容院に行くことすら抵抗のある人間である。そんなところに行くなんておこがましいとしか言いようがない。
第一、エステティシャンなんてとっつきにくい、悪く言えば高ビーな女の集まりじゃないの(後日これは間違いとわかる)。俺なんか行ったってばかにされるのがオチ…とその場では一度消去してしまった。しかし毎週のように載る広告を見るうちに、一度体験してみたいという気持ちは強くなっていった。次の問題はお金であった。お試しコース5000円という広告から僕は通常料金は一回その倍の10000円と予想した。そして25回くらい行けばそれなりの成果は出るんじゃないかと考えた。先月僕はラスベガスに行き、カジノで20万円負ける予定が何と5万円勝ってしまっていた。その残金で何とかそれくらいのお金は用意できそうである。
なあに、お試しだから気に入らなきゃ断わりゃいいんよ。初めて広告を見てから3週間後、僕は一大決心で電話をかけた。そしてその5時間後、それが大きな間違いであることを知るのである…。
(次号へつづく)
2.とまどいながらの入会
僕は緊張しながらダイヤルした。
ありがとうございます。デブハウス(仮名)予約センターですやけに明るく、甲高い女性の声であった。何を話したかはもうおぼえていないが、とにかくおなかを引っ込めたいこと、おためしコースを体験したいことを希望した。そして、その日の18:00に銀座に行くことになった。
指定された場所はすぐにわかった。ドアの前で深呼吸。なんせ未知の世界であるから。決心してドアを空ける。とたんにユニフォームの女性が笑顔で迎えてくれた。
今日お電話したデブ(仮名)です。というとデブ様、お待ちしてました。やけに愛想が良い。それに様付けで呼ばれる経験なんてめったにない。緊張とはずかしさで早速汗が出てきた。二言三言話した後、ヘルスチェック(注)なるものを受けることになった。僕はじっとしているのが苦手で、たとえば血圧なんかを測られるとどきどきしてしまうたちである。とにかく早く終わってほしいと思っていた。
その間にも入れ替わり立ち替わりエステティシャンがやってきてはニコニコあいさつしてくれる。全体の雰囲気が当初のイメージとは違うなと感じていた。もっとも今まで僕のこういう予想があたったためしはないが(笑)。そしてアンケートを書いた。お酒をやめれますか?の問いにお酒が大好きな僕はnoと答え、できれば(笑)と書いた記憶がある。それが受けたようで、本当に笑われた。そしてその後個室にて店長の説明を受けることになった。
説明してくれることは専門の言葉を除いては大体良くわかった。今後もし会員になった場合、僕は何をするのかと言うことは想像できたし理解できた。そのことには全然問題なかった。問題は費用である。パンフレットをめくりなおして、店長は僕に合うプランとその費用を説明してくれた。次の瞬間… 僕は真っ白になった。とんでもないところに来たと思った…一桁多いのよ…どうあがいても僕が用意できる金額ではなかった。また汗の出た僕は冷静を装いながらもコースの一つ一つの意味合いを聞きなおした。できたら今すぐここを出て帰りたいと思いながら…。店長もその辺は良くわかっているようでそれじゃ、とりあえず体験してみますか?その言葉に救われた僕は個室を出て、着替えることになった。
☆
技術室に入るとまたもかわるがわる挨拶をされた。よくまあ挨拶するひとたちやなあ…そう思いながら体重を測り,写真を撮る。これがいわゆる使用前やなあ…そしてサウナに入る。15分と聞いて大丈夫だろうかと思った。その間にもみんなひっきりなしに声をかけてくれる。良く汗がでますねェ。僕はもともと汗かきであるが、そのことであまり良い思いをしたことがない。会議中の冷や汗や、満員電車での蒸し風呂状態は悲惨である。汗が出ることで誉められるのはあまりないので、気分が良くなった。顔を出しているので苦しくもなく、15分はあっという間に感じた。次はテレビでしか見たことのない超音波。楽しみであったが、とくに気持ちがいいわけではなかった。
時間の関係もあって、今日はここまでという話になり、体重とサイズを再測定した。体重は0.8kgほど減っていた。ところがウエスト測定という段になって、何度も測りなおされた。それもそのはずで、最初よりふえていたのだから。そのときは予想(予定)と違う数字に少しとまどっているエステティシャンの顔を見る余裕があった。
☆
着替えた僕は再び店長と個室に入った。さっきとはうってかわり、店長はローンの支払方法を説明しだした。ちょっと待って!!誰も入会するなんて言うてへんで…あせりながら僕は聞いている。それでもやっとの思いで、もう一度内容について説明してくれるように頼んだ。とにかく時間稼ぎしたかった。自分がただ言われるままに入会させられることへの恐怖と、納得して入会する場合の支払方法について整理したかった。わかりました。せっかくだからお世話になろうとは思っているんですが…数分の後にこう言った瞬間、お互いの緊張が解けた様に感じた。僕は正直に最初に提示されたプランの金額は払えないことを言い、とりあえず最初どのようにはじめれば良いかを聞いた。それでも出来上がったプランは、当初予算の3倍にもなる代物だった。でもローンは懲りている僕は、一時金+ボーナス払いというぎりぎりの線を選択した。家への帰り道、予想外の展開(出費)にとまどいつつも、自分で決めたんだからと自分を必死に納得させていた。
…次号へ続く
(注)ヘルスチェック…手足24箇所の経絡(ツボ)に流れる電気量を測ることによって、内臓の働き、自律神経のバランスを測定、お客様が自覚していなかった内面の問題点を身体の反応から探りあてることができます。
3.初めてのエステ体験
次の日、早速一度目の予約を取っておいた僕はハウスに行った。やはりドアを開けると同時に笑顔のあいさつが帰ってきた。“早速予約を入れてくださってうれしいです…”。昨日に比べ、会員になった僕に対して心なしか安心して接してくれているように感じた。
まずやはりサウナに入り、続いて昨日説明を受けた老廃物を出しやすくするテラピーという技術を受けた。足を中心としたマッサージで、少し足がむくんでいた僕は正直言ってことのほか気持ち良かった。一度入会したら,あれこれ思わず楽しむのがいいようである。但し、最後にパックといって手足を含め全身くるまれるのは少し苦しかった(僕は少し閉所恐怖症のところがある、そしてこれからずっとくるまれることになるのである)。つぎに昨日同様超音波を受けて全ての技術が終わった。約1時間30分、担当してくれたKさん(仮名)が終始やさしかったこともあって心地よい時間を過ごすことができた。最後に体重を測ったら1kg減っていた。あれだけ汗をかいたからあたりまえという気持ちと、効果があったんじゃないのといううれしい気持ちが入りまじっていた。Kさんをはじめまわりにいたエステティシャンは1kg減ったことを“うれしいです…”とわがことのように言ってくれた。
そういえば今日一日で何回“うれしいです”と“楽しみです”を聞いたことだろう。みなさん口癖になっているようだ。僕は聞くたびに悪い気はしないけれど、人の体重が減って何でうれしいんだろうと少しオーバーな感じもしていた。
☆
着替えを終わり、ロビーに戻ってきた僕にお茶が待っていた。汗をかいてのどが乾いていた僕にはうれしかった。しかし、本当は技術を受けた後は効果を出すために一時間半は飲食禁止になるそうで、今日はテラピーだから老廃物を出すために特別だということを聞かされた。これは僕にとって試練になりそうであった。
次にやはり昨日購入した食養セットをもらった。以前より健康食品について良い印象を持っていなくて、昨日もかなりこれに抵抗した僕は怪しげにそれらを眺めた。酵素・クルクミン・ヨーグルンをこれから飲むことに関しては、正直乗り気がしなかった。家に帰った後に恐る恐る酵素を飲んで みた。なんとなく養命酒のような味を連想していたので、思ったより飲みやすいなと思った。クルクミンはまったく味がなかった。これを食品と認めるのはちょっとむりがあるんじゃない だろうか?(笑)。
とにかく一日目が終わった。エステティシャンはみんなやさしそうだし、こころなしかおなかも柔らかくなってきているようである。今後のことが楽しみになって、夕方いつものように飲みにいった僕である。(…次号に続く)
★エステティシャンの七不思議★
どうして美顔だけみんな“お”をつけるのでしょう???
…スタッフは確かに痩身コース、脱毛コース、そしてお美顔のコース、と美顔に「お」
をつけることが多いのです…。 みなさんもサロンでスタッフに直接聞いてみてください。
4.キャンセルの恐怖
ハウスに入会する際に、店長にひとつだけ条件というかお願いをした。当日のドタキャンを認めてくれということである。これはお店の中にも規約にも書いてあるとおり、技術を行ったとみなされても仕方ないとなっている。当然の事だし、なにより店に対して失礼であると思う。
しかし僕の仕事はトラブルや臨時の会議など、予定時間の変更は日常茶飯事である。又19:30までにハウスに入ろうと思えば、19:00には会社を出る必要がある。当然そのつもりで仕事を調整するのだが、お客様よりちょっと来てくれといえば断れないし、一度問題が発生すれば下手すれば家にも帰れない。
店長は僕の事情を理解してくれ、はじめから言ってくれているのだからと快く了解してくれた。僕は感謝すると共に、そういうことが起きないことを祈った。
☆
ところが、早速にして起きてしまった。19:30に予約していたにもかかわらず、突然のトラブルのため帰れなくなってしまった。19:00にお詫びの電話を入れて謝るしかなかった。
それではと土曜日に予約を入れたら、徹夜明けで疲れてしまい起きれないといった体たらくである。これにはまいった。自分の気持ちもゆらぎそうになったが、ハウスの方にキャンセルばっかりするいいかげんな人間と思われそうで、気持ち良く通えなくなるのではという気がしてすごくいやだった。
とにかく、言われたとおり週に二回は通おうと思っていたので、一番仕事上キャンセル の可能性の少ない水曜(残業自粛日)と土曜に行くように予約をした。水曜日は18:00ころからそわそわし始めて、極力新しい仕事を入れないようにしていた。そして逃げるように会社を出て、ハウスのある銀座へと向かったのである。こんなゆとりのない状態ではなく、もっとリラックスして通えればいいのに…。できれば、週一回23:00迄営業してくれていればどんなに助かるだろうと、これは今でも思っている。…次号に続く
注)現在はサロンの営業時間が週に何日か伸び、お客様に通いやすいように改善をしております。営業時間はサロンによっても異なりますので、詳しくはHPをごらんください。
5.マッスルトレーニング
僕はお酒が大好きだが、もうひとつ大好きなものにスナック菓子があった。特にポテトチップは大好物で、毎日のように寝る前に、時にはビールと一緒に食べていた。もちろん会社にも持ち込んでバリバリと食っていたのである。僕は入会したときに、目標体重は75kgと言うには言ったが、体重にこだわっていたわけではなかった。まずは現状維持、そしてこれ以上体重が増えないようにしたいのである。
だからそんなにやせなきゃという悲壮感はなかったし、まして自分の食生活を変えるつもりはなかった。そしてそんな食生活をハウスでも隠さずに話した。するときまってお酒とかポテトチップが体に、そして減量のためにならないかをエステティシャンに延々とお話をしていただくことになるのである。
☆
そうこうしているうちに、最初のテラピーがおわり、いよいよコースの中心である(注)マッスルトレーニングなるものをすることになった。あわせて担当が今までテラピーをやってくれていたKさん(仮名)からAさん(仮名)に替わった。僕はKさんがずっとやってくれていたので、専属というか僕の担当と思っていた。Kさんは僕にとってなかなか良かったので、正直続けてほしかったし、残念であった。Aさんも例によって“今日からマッスルですね。楽しみです…”なんて話してくれる。新しいことをやるのは確かに僕も楽しみであった。しかし、いざマッスルが始まるとやはり手も足も出せずにくるまれるのであった。これじゃ変わらないじゃないか(笑)。
低周波を用いた筋肉運動(EMS)という事で、全身20箇所のつぼにパットをあてて刺激するそうである。水にぬれているパットを当てられるとひやりとする。パットの装着が終わり、少しずつAさんが各部分のボリュームを上げていく。最初はほとんど刺激も感じずに、心地よいというか物足りないと言った感じだが、急にブルブルと強い刺激がやってくる。“それでは今から25分測ります。”一体これからどうなるんだろうとひやひやしていた。しばらくしていると、Aさんが濡れタオルをもってきてくれた。そして,ひたいと首の後ろに当ててくれた。これはありがたかった。
暑苦しくて、心臓が苦しくなっていただけにそのつらさがスーッと引いていくのが良くわかった。Aさんの丁寧な手つきに、僕はなんとなく風邪を引いて看病してもらっているような錯覚に陥ったものであった。ところが、残り5分となったところで急に苦しくなった。考えてみれば、ここしばらくまともに運動などしたことのない僕である。急に筋肉に刺激を与えればこうなるのは当たり前である。しかし、リタイヤするのはしゃくであった。なにもこんなところでがまんしなくてもと思いつつも、恥ずかしさが優先していた。最後は高校時代のクラブの苦しさをほうふつさせることとなった。やっとのことで25分がおわり、苦しさのあまり3分くらい起きあがれなかった。これから毎回これをやるのかとおもうと…先が思いやられた。(次号に続く…)
☆エステティシャンの七不思議
体重を読み上げるとき、10の位を言わないのは、
他のお客に体重を知られないようにという心遣いなんだろうか…
注)マッスルトレーニングは現在、ファットバーンとなり、トリプルバーン痩身法に組み込まれています。このファットバーンは過去の低周波より深部に電気的な刺激が到達させる中周波を用いています。エステテック業界では初めての特許申請マシーンです。
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