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6.もみ出し
こうして僕はAさんとマッスルトレーニングを行っていくことになった。それまではあまり話したことのなかったAさんではあったが、おもしろくてKさん同様なかなか良い人であった。なにより一生懸命やってくれるのが伝わってきて、僕はそれがうれしくてすっかりファンになった。
このころになると、僕も少し余裕が出てきて、周りの様子も見渡せるようになった。隣のベッドでは、やはり僕のように包まれている人や、全身塩だらけになってマッサージを受けている人がいた。他のエステティシャンもみんな相変わらず挨拶をしてくれるし、僕の目が悪いということを知っていて、50cm先まで来てくれる人もいた。テラピーをやってくれたKさんも、僕がきているとわかるとわざわざ声をかけてくれた。
☆
さて、僕のコースの中に入っていて、おなかが硬くてまだ早いと止められているものに「もみ出し」があった。これをやられている人は例外なく悲鳴を上げていた。中には絶叫してもがいて(?)いる人もいる。横から見ていても、エステティシャンはみんな全身をリズミカルに動かして思い切り力をこめておなかをこねくり回しているようであった。
僕はあれだけはやりたくないと思っていた。ただでさえ包まれていやなのに、何でこれ以上痛い目をせなあかんのだろう…。おなかを触られるだけでも苦手なのに…。ついにその日がやってきてしまった。おなかをさわって様子を見た店長が“だいぶやわらかくなってきましたね。もういいでしょう。”という言葉と共に、超音波が終わっていつもの通りさあ帰ろうと起きあがった僕は、もう一度ベッドにくぎ付けにされた。Aさんは手もみしながら“いよいよですね。さあやりましょう、楽しみですね!!”といった感じである。あなたが楽しんでどうするの(苦笑)。少し、いやかなり恐れている中でもみ出しが始まった。最初はほぐしといって、文字通りおなか全体をほぐしている感じである。これは正直言ってさほど痛くなかった。次にもみ出し、いや正確には脂肪の搾り出しといったほうがいいだろうか、これは痛かった。おもわず声が出そうになる。
しかし、マッスルのときと同様僕の負けず嫌いが顔を出し、何としても“痛い”の言葉を言いたくなかった。そうしているうちに又ほぐしに変わった。ほっとするのもつかの間、又搾りにかわった。確かに脂肪が搾り出されているようで効果はありそうだが、おなかの右半分が終わったときには汗びっしょりになっていた。残りの半分が終わった後“もみ出しはどうでしたか?”と笑顔で聞かれた。“こんな痛いことをしておいてどうですかもないだろうに…”と思いつつ、“効きますね…”と答えるのがやっとであった。(次号に続く)
☆エステティシャンの七不思議
どうして電話に出るときは、
みんな甲高い声になるのだろうか…
7.心境の変化
前にも書いたとおり、ぼくは食生活を変えるつもりは毛頭なかった。以前テレビでやっていた“たかいだけのビュ―ティクリニック(仮名)”主催のシンデレラコンテストのドキュメントを見たときには、みなさん私生活でも涙ぐましいほどの努力をされていた。僕ははじめからそんなことはできないと思っていたし、楽しく通えないようならそもそも会員になるつもりはなかった。ハウスも本心はどうだか知らないが、それでもいいと受け入れてくれたので僕は会員になったのである(笑)。とはいうものの、毎回僕はエステティシャンのご指導を受けることとなったのである。マッスルやサウナという、手も足も出ない状態の中でお酒や食生活について説教される(ご指導いただく)のである。考えてみれば、当然である。間違いなく僕はやせるためにここへ来たのだから…。エステティシャンからすれば僕がやせるための当然の励ましであった。
というわけで、その日もマッスル中に僕は手も足も出ない状態でAさんの御言葉を聞いていたのである。自然に話題はポテトチップになった。何を話したかもう覚えていないが、僕はちょっと控えてみようという気になった。何と言っても僕のために一生懸命になってくれているAさんの姿に、少しずつその気になったのである。とはいうものの、それからが一苦労であった。僕はいつも会社帰りにポテトチップや他のスナック菓子を二つは買って帰り、それがその日のうちになくなることも珍しくなかった。そして、スナック菓子のコーナーに立ってどれを食べたくなるか(脂っこいものか、あっさりしたもの)によって、その時の僕の体調がわかるほどであった。僕がそれをやめるということは、例えてみればタバコを一日に40本吸う人が禁煙するようなものだった。
☆
その日もいつものように帰り際にコンビニへ立ち寄った僕は、スナック菓子のコーナーでいつも手に取る大きなポテトチップから目をそらして、悩んだ末に隣にある小さなポテトチップの袋を2つ手に取った。そしてチーズをあわせて購入した。家に帰ると、僕はいつものようにポテトチップを貪るように食べた。あっという間に2つの袋は空になった。まだまだ食べたいが、もうないのである。無い物は食べられない。しかし、僕の口やおなかはまだまだほしがっているようである。
しばらくの葛藤の後、買ったチーズに手を伸ばした。寝る前に食べるとしても消化がいいだろうと思って買ったのだが、なめるように削るように少しずつ食べた。布団に包まって雑誌を読みながら、結局チーズを3つ食べた。その30分後、ようやく眠りについた。まわりからみたら馬鹿みたいな光景だが、本人には大問題である。そんなことを続けて3週間後、僕はやっとスナック菓子からおさらば出来たのである。
☆
もうひとつの変化は、体重を気にするようになったことである。僕のパターンは一度ハウスに来て技術を受けると、大体1~1.5kg減る。そして、次にくるときには大体同じ位に戻っているのである。これじゃ何にもならないと思うかもしれないが、それでもおなかが毎日柔らかくなってきているのは自分でもわかっていた。しかし、だんだんと日々の体重がどうなっているのだろうということが気になり、家の近くのジムに行く度に毎回体重計に乗るようになった。ちょっとずつ、僕もエステティシャンの影響を受けてきたようである(苦笑)。(次号に続く)
8.中だるみ
少しずつだが、体重は減ってきていた。83kgでスタートしたが、82、81、80とへってきて、ついに70kg台になった。ここしばらく見ない数字だったので、これはうれしかった。そのころはポテトチップ以外にもいろいろと気を遣ってきていた。お酒もビール一辺倒だったのが、暖かいものがいいといわれれば焼酎のお湯割に変えたし、電車の帰り道には一駅先まで行って歩いて帰ってくるようになった。“人に言えない恥ずかしい努力をしてるんよ”とハウスでは言ってはいたが、実際こんなものであった。
☆
しかし、そこから体重は一進一退になってきた。“三歩進んで二歩下がる…”なんて歌があったが、まさしくその通りであった。そのことについては僕の責任であることは疑いがなかった。お酒をはじめとした僕の食生活はとてもダイエットを目指している人のそれではなかったし、日ごろの生活が体重を大きく左右することは
重々承知していた。僕は忙しいながらも週に二回通っていた。これだけは入会時に言われたことの中で、何とか実行しようと思っていたことであったし、ハウスに行くことはいつのまにか生活の一部になっていて、なんとか時間をやりくりしてがんばっていた。でも,このころから少し疑問が出てきたのも確かだった。
一度技術を受けると確実に1.2~1.5kgやせたし、いつも良く汗をかくことから好意的に言ってくれるエステティシャンの言葉と笑顔は気分のいいものだった。でも実際このままだとコースが終わった時にどのようになっているのだろうと思った。あつかましいかもしれないが、今までと同じ生活を続けていてもエステでコースを受けた分は確実に体重が下がるだろうと思っていたのも事実である。
もうひとつ思っていたのは、僕は自分の食生活を包み隠さず話していたし、ハウスのほうもヘルスチェックをやったり、エステティシャンが毎回僕のおなかを触ってくれているわけだから、今の状態がどのような感じなのかという事をもっといろいろと話してほしかった。例えば、24回のコースを申し込んでいて、最初がこんな感じだったから8回目の今日でこのような状態だったら終わったときにはこうなりますよとか、“普通の人に比べて少し体重の減り方が遅いですね…”とか、1回1回の体重の減少だけでなく,トータルなカウンセリングというかアドバイスをしてくれればありがたいのにと感じ始めていた。そうこうしているうちに、僕にとって残念なことが起きた。(次号に続く)
☆エステティシャンの七不思議
どうしてみんな名前を覚えるのが
あんなに早いのだろうか…
9.異動
その日も、いつものように技術を受けた僕が着替えてロビーに戻ってくると、Kさんがやってきて今週限りで銀座店を離れることになりましたという。僕はびっくりして“残念ですね…”といった。こう言う場合、単なる挨拶だけの場合もあるが(苦笑)、今回は本当に残念だった。(ホントですよ:Kさん)
さらに聞くと横浜の上大岡に新しい店が出来るので、そこでがんばるという。それを聞いて今度はうれしくなった。僕は月に1.2回京浜急行で上大岡のその先の金沢文庫にマッサージに通っていたのである。正直言って同じ日にそこから銀座へ行くのは苦しかったので“なんや、これからマッサージの帰りに通えるやん…”とうれしくなった。僕は,近いうちの再会を約束しKさんとお別れした。
☆
何回か通っているうちに、エステティシャンの中にいろいろな意味で好き嫌いが出てくるのは仕方がないと思う。もっと正確に言うと、みなさんすごく親切で礼儀正しくて、嫌いな人はいない。しかし、良く話す人もいればそうでない人もいる。もっといえば、技術を受けていても合う人(合わない人)が出来てくるのである。
もちろん、普段の会話でちらりと聞くだけでも全てのエステティシャンが同じレベルの技術を持てるように厳しい研修を日々行っているのはわかったし、そのことには仕事とはいえ尊敬するだけである。でも、個人の技術レベルがどうこうではなくて、その人の力の入れ加減や、手の大きさなど個人ではどうしようもないことによっても、(自分にとって)合う合わないが出来てくるのは仕方ないことだと思う。又、慣れている人にやってもらうのがいいということもあるだろう。そういったことも含めて“いつもあの人にやってもらいたい…”と思うのはより良いサービスを受けるための客の権利といったらわがままだろうか。もうひとつ思ったのは、銀行のように特定のエステティシャンと客が仲良くなり過ぎないように定期的に異動があるのだろうかということである。
真偽の程は良くわからないが、ハウスの場合は今サロン拡大急成長中という感じで、人の異動が激しい時期なのだろうという気もする。いずれにしても、気の合う人(自分にとって)がいなくなることはさびしいことだった。(次号に続く…)
10.新しい気分で
心配されていた2000年問題も大過無く、新しい年を迎える事となった。ハウスに通って3ヶ月、年末年始の暴飲暴食に気をつけるようにとのエステティシャンのありがたいお言葉を少し気にしつつ、しかし京都に帰ってしまえば大いに飲んで食べた僕であった。ハウスのほうもKさんに続いて僕を誘ってくれた店長も年内一杯で横浜に移転となり、代わりの新しいメンバが入ってきていた。
☆
新年の第1回目、僕はその新しく来たBさん(仮名)に技術を受けることになった。ここに来る前には別の店で店長をやっていたと聞かされた。Bさんは僕のカルテを見たとたん、僕の体重の減り方が遅い事を指摘した。そして、“このままでは勿体無いですよ、新しいことをはじめましょう”とか“私もまだ来たばかりですが、これから一生懸命見ていきますから”などど、今までの人にはなかった強い調子で話し続けた。僕は戸惑いながら聞いていた。熱心に話してくれているのは良くわかったが、正直言ってあまり楽しい時間ではなかった。悪いいい方をすれば、“何やねんこの人”である。超音波のときはほとんど話もせず、気まずい雰囲気であった。技術の終了後、ロビーでもBさんが話しかけてきて、僕に摂取した油やカロリーをカットする食品と、体内脂肪の燃焼を助ける食品を買うように勧めてくれた。ただほとんど一方的に説明して、わかりましたか?といった感じだったので僕は良い気分がしなかった。僕は今まですでに3つも食品を購入しているのだからそれを飲めば必要ないといって、一度は断った。本音を言えば、“いままでこんなにお金も使ってる(技術を申し込んでいる)し、酵素やクルクミンもあるのに何でいまさら又食品を買わなきゃいけないんだ?”って感じだった。
そこへ新しく店長になったTさん(仮名)が入ってきて、サンプルでいかにこの食品が油分を吸収するかの実演をやってくれた。僕は正直雰囲気がやわらかくなって救われたし、Tさんがせっかくやってくれているのだからと考え直してみた。何度も書いてきたとおり、僕はお酒を止められないし、ラーメンや脂っこいものは大好きである。そう考えてみれば食べたものを吸収しないというのは僕には合っているようだ。正直言って僕も何か手を打てるのだったらと思っていたところだったし、だまされたのかもしれないけれど(苦笑)ともかく僕はカロリーをカットする食品“デブ1/2”(仮名)のほうを購入した。
☆
家への帰り道、新たな出費をした事の戸惑いと怒り、そしてBさんの(僕に言った)事を考えてみた。確かにBさんももっと言い方があるだろうにと思ったが、よく考えてみると彼女は僕の現状とこれまでの経過を見たうえで、このままだといい結果は出ないと判断してアドバイスをくれたのである。そして、そう言ったアドバイスこそが以前にも書いたように、僕が一番求めていたものかも知れなかった。僕は店にいたときと打って変わりBさんに感謝した。他の食品よりもまじめにデブ1/2は毎日採りつづけ、事実心理的な効果もあわせて良かったと思う。その後Bさんには余り技術を受ける機会に恵まれないのでそれほど話をしていないが、いずれじっくり話してみたいものだと思っている。
(つづく)
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